学会について

会長 林 哲也

会長挨拶

林 哲也
九州大学 大学院医学研究院 細菌学分野

日本ゲノム微生物学会の第4期(2015-2017)評議員会において、会長に選出された林哲也です。吉川評議員会議長と協力しながら、新評議員・新役員の方々とともに、今後3年間の学会の運営にあたらせていただきます。ご協力をよろしくお願いします。

本学会は、1999年から2006年までの8年間、かずさアカデミアホールで開催されたワークショップ「微生物ゲノム研究のフロンティア」を前身として、2007年に創設された若い学会です。全ゲノム配列解析の勃興期に始まった「微生物ゲノム研究のフロンティア」は、当時実施されていた大型のゲノム関連事業(特定領域研究、未来開拓推進事業等)の共催で開催され、全ゲノム解析という新しい手法を中心とした微生物ゲノム研究に関する最新の情報を交換する場となり、運営も会場での議論も非常に自由な研究会でした。この間、マイクロアレイ解析、プロテオーム解析、メタボローム解析、システムズバイオロジーなど、様々な研究手法が開発されました。さらに、最初の次世代シーケンサーも登場し、バイオインフォマティクスも大きく進歩しました。本学会は、こういった急速な技術革新を背景に、我が国の微生物ゲノム研究のさらなる展開を目指して、吉川寛初代会長のもとに2007年に創設され、2007年3月にかずさアカデミアホールで第1回年会が開催されました。その後、第2期及び第3期の小笠原会長のもとで、会員数も徐々に増加し、現在は約500名の正会員・学生会員を擁する学会となっています。

日本ゲノム微生物学会には、基礎から応用まで、理学・医学・工学・農学・環境学・バイオインフォマティクス等の幅広い分野、そして様々な研究手法を得意とする研究者が参加していることです。日本国内では、これだけ広い分野の研究者と議論・情報交換ができる学会は他には無く、本学会の大きな特徴です。これは前述の「微生物ゲノム研究のフロンティア」からの流れであり、そこには、研究目的や微生物の種類ごとに多くの研究コミュニティーに分かれて進められてきた微生物研究が、ゲノム配列情報を共通の基盤として、互いに情報を交換しながら統合的に研究できるようになったという状況があります。次世代シーケンサー等の使用が一般的となり、さらに次々世代シーケンサーの開発が進む現状の中で、様々な分野の微生物学研究の今後の展開には、ゲノム情報を活用した統合的な(旧来の研究分野を超えた)研究が必須であることは間違いないと思います。このような世界の微生物研究の潮流の中で、国際的な我が国の存在感の低下も指摘されていますが、本学会は、こういった流れの中で、日本における微生物学研究の統合的な展開を牽引する研究者コミュニティーとなることを目指しています。

本学会の特徴としては、年会では全参加者が一同に会して(一会場で)議論・情報交換を行うというスタイルも挙げられます。また、新しい研究手法を用いた研究が多いことや学会自体が若いということもありますが、年会等での議論では常に若手研究者が中心となっている点も大きな、そして大切な特徴であろうと思います。「学会の活性化」が多くの学会で議論されています。しかし、重要な点は、学会員数の単なる増加等ではなく、とにかく面白い学会であること、つまり、新鮮で、面白く、わくわくするような発表が聞けて、議論の中から新しい情報や共同研究などの芽が生まれるということではないかと思います。来年、2016年は本学会の創立10年にあたります。これを記念して、国際シンポジウムの開催(2015年の年会との併催)も企画しています。若い学会であることの利点を最大限に活かして、ますます面白い学会となるよう、時には試行錯誤をしながら、フレキシブルな学会運営に取り組んでいきたいと思います。会員の皆様のご協力を御願いするとともに、より多くの微生物研究者の皆様の本学会への参加を期待します。

2015年3月10日


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